ダイスの言うとおり

ダイスにはロマンがあるよな

SoCのマニアックな話

 現状でマルチコアなスマートフォンなりタブレットなりを買うとしたら、SoCにはどういった選択肢があるのか。またSoCの今後はどういう形で進んでいくのかなどといったことの雑感。


 SoCと一口に言っても分からないよ、という方のために解説。いやこんなエントリ見る人ならみんな知ってるかもしれんけど。
 SoCとは System on a chip の略。一般にスマートフォンのCPUとしてSnapdragonやTegra2などという単語を聞いたことがあるかもしれないが、実はこれらはSoCにあたる。SoCとは一つのチップ上にいろいろな機能を持った回路を集約したもの。当然CPUも乗っているし、GPUや通信制御のチップも乗っている。スマートフォンの中枢部が全てチップの上に載っているわけで、Systemがオンチップであるよ、という名称。
 このSoCの上にいわゆるARM系アーキテクチャを採用したCPUが乗っており、そのCPUとGPUやら制御チップやらの組み合わせでいわゆるSnapdragonやTegra2といったバイネームなSoCとなる。

 まぁうだうだ言っても始まらないので、以下適当に主要なSoCを紹介。の前に。
 昨今のSoCに乗っているARM系のCPUについて少し。

 これらのCPU(のアーキテクチャ) にはあまり種類がなく、ARM Cortex-A8かARM Cortex-A9が現在の主流。これらを一つ積んでいればシングルコア。二つ以上積んでいればマルチコアとなる。例えばnVidia製のTegra2にはARM Cortex-A9が二つ積まれている。
 ARM Cortex系はARM Cortex-A8、ARM Cortex-A9の他にARM Cortex-A15というものがあり、一般的に数字が大きいほうが高機能でクロック周波数も高くできる。ただしその分面積も大きくなるし消費電力も増えるため、限られたバッテリで長時間駆動を要求されるモバイル端末において、単純に高性能なCPUを使えばよいというわけにはいかない。処理速度、消費電力、チップのサイズ、発熱、etc.etc... などを考慮しつつ最適解を探していくのがSoCメーカの永遠の戦い。
 もうひとつ重要なのが製造プロセスで、要するに回路の幅がどれくらいの大きさか、という目安。一般的に回路が細くなればなるほど同じ面積にたくさんの回路を詰め込むことができ、回路の長さ自体も短くなり、その分演算速度が上昇するなど、利点は多い。ただしどう足掻いても発生するリーク電流や、回路が細くなることによる抵抗の増大(電気抵抗は一般に回路が太く短いほど少ない。抵抗が大きくなると当然消費電力は大きくなる)、そのための電源管理など、容易には小さくできない。

 で、まぁ現在のマルチコアなSoCとなると、有名どころは以下のようになる。


○Tegra2
 パソコン自作派なら知らぬ者のないnVidia社製のSoC。CortexA9なコアを2つ積んでいる。製造プロセスは40nm。モバイル用途向けに開発されているが、次期WindowsもTegraシリーズで動く予定(つかWindowsは今後ARM系プロセッサでも動く予定)。
 GPUに省電力型GeForceを使っており、グラフィック面の強さには定評がある… はずだったが、実は動画系が弱いという評判。H.264のフルHD動画を再生する際にBaseline Profileなら問題ないが、Main ProfileとHigh Profileだと見るに耐えないほどコマ落ちするのは有名。最も、OSのサポート範囲が問題であることもあり(HoneyComb3.0だとBaseline Profileまでしかサポートしていない)、どこまでがTegra2の限界かという切り分けは難しい(いちおうMain Profileはサポートしているはず。High Profileはお察しください)
 グラフィックに強いという売り出しだったにも関わらず、動画でこうしたマイナス面があったためにTegra2の評判はイマイチだが、単純に処理能力で見るなら後述のSnapdragon S3やExynos4210よりも上とされており、デュアルコアマシンのSoCとしてはまだまだ現役バリバリ。
 省電力性についてはそれなりに優れており、使っていない機能の電源を遮断する設計になっている。まぁ最近のSoCはみんなそうだけど。

○Snapdragon S3
 シングルコア時代は猫も杓子もSnapdragonを使用していたため、モバイル端末のスタンダードと言っていいQualcomm社製SoC。世代別にS1、S2、S3となっており、S1はXperiaからこっち、2008年製のスマホほぼ全てに積まれていた。S2もシングルコアで、当時としては脅威の軽快な動作を誇ったDesireHDや、大ヒットとなったXperia arc、Xperia acroなどがS2を搭載。そしてS3はデュアルコアとしてEvo 3Dなどを皮切りに大々的に登場した。
 アーキテクチャは独自仕様のScorpionと言われるもので、Cortex A8/A9の特徴を持ちつつも演算速度が強化されている。製造プロセスは45nm。で、大々的に登場したはいいものの、これを積んだマシンがExynos4210を積んだGalaxy S2にベンチマークでズタボロに敗北。確かにExynosはベンチマークで数字を稼ぎやすいSoCではあるものの(ベンチマークではExynosはTegra2にも圧勝するが、一般にTegra2の方が全体的な処理速度はわずかに上という評価が多い)、それにしたってS3は何か内部で引っかかってるんじゃないか、というような数字しか出せず、またタブレットに搭載されたS3はOMAP4を搭載したタブレットに比較してスクロールの際のもたつきを指摘されている。
 口さがないスペック厨の間では「S3はダメ」 という評価が定着してしまい、有名なデュアルコアシリーズの中では最底辺に置かれることが多い。OSのチューンが原因の部分も多いと思うけどなー。
 ちなみにダメとは言っても、S3を搭載したスマホの動作で「こりゃダメすぎ」 という評価を下せる人はあんまりいない程度には軽快に動作する。S2でギュンギュン動いてたんだから、S3でダメなわきゃーないわな。

○Exynos4210
 サムソン製のSoC。CortexA9コアを2つ搭載。製造プロセスは32~45nmと諸説ある。GalaxyS2に搭載され、とてつもないベンチマークを叩き出した。積んでいるGPUのMali-400 MP Coreは定格の6割で駆動されているとされ、本気を出したらもっとスゴイ(消費電力もスゴイので6割運用)
 基本的にサムソンのSoCは動画に大変強く、Tegra2が苦労するH.264のHigh ProfileをシングルコアのS5PC110(GalaxySとかGalaxyTabとかのSoC) がサクサク再生したりする。Exynosも当然動画には大変強い。が、発熱と本気を出したときの消費電力もスゴいという欠点があり、大容量バッテリを積んでいない端末では採用しづらいのと、通信規格に汎用性がなく、LTE通信を行うGalaxyS2 LTEなどではSnapdragon S3を搭載せざるを得なくなるなど、基本的にはサムソンのフラッグシップ向けのSoCだと割り切っている感じ。
 動作の軽さには定評があるという話だが、もともとGalaxyシリーズは動作の軽快さに特化したチューニングを行っている機種だけに、SoCの貢献だけとは考えづらい。

○OMAP4
 やや遅れて登場したTexas Instruments製のSoC。CortexA9コアを2つ搭載。製造プロセスは45nm。これだけ見ると平凡な造りに見えるが、だいたいの性能に置いて微妙にTegra2と同等か上回っており、現状のデュアルコアでは最も性能が高いとされている。特筆すべき点が特になく、満遍なく高いという非常になんとも言いようのないSoCで、得意科目は無いが平均点が高い、といえば分かりやすいか。
 現在SoCの世界は4コアの時代がやってこようとしているが、デュアルコアの需要もまだまだ続いていくと考えられ、その中でも遅く登場したOMAP4は性能と価格のバランスでこれからのデュアルコア市場を席巻していくかもしれない。すでに冬春モデルのスマホやタブレットではOMAP4を搭載した機種が散見され、また次期NexusであるGalaxy NexusはOMAP4460を搭載している。
 OMAPシリーズは次のOMAP5がCortexA15のデュアルコアとなることが決まっており、CortexA9を4コア積むTegra3と、CortexA9の5割り増しの性能であるA15を2つ積むOMAP5のどちらに軍配が上がるかでモバイルSoCの行き先が左右されそう(OMAP5は製造プロセスが28nmなので、同じ28nmのSnapdragon S4と比較するべきかもしれない。Tegra3は40nm維持)


 などとマニアックなエントリとなってしまったが、まぁ趣味の世界だしな。

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コメント

SoCのお話、大変面白かったです。
近頃は中華PADなどの中華CPUにtegra2などはベンチで負け、散々ないわれようですが、ここを見てベンチだけで図るべきではないと、改めて思いました。
中華CPUはプチフリなどがあって、ベンチどおりの動きはしませんからね。

SoCはどんどん面白くなってきてますね。
このエントリから世代が進んでTegraは3になり、スナドラはS4になり、Exynosはクアッド化し、満を持してOMAP5が登場しようとしています。
そして中華パッドの世界も廉価ながら侮れない性能を持った機種が登場し、SoCの世界の裾野を広げています。
たぶんこれはSoC沼なんだ。踏み入ったら戻ってこられない。わかっちゃいるんだ。わかっちゃ…

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白銀

Author:白銀
TRPGと付き合ってはや十数年。
まさか結婚相手までTRPG者とは、TRPGで遊び始めた頃の白銀少年は知る由も無かった。

ルールブックの範疇で好き勝手に遊ぶので、ご一緒の際はよろしくどうぞ。

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