ダイスの言うとおり

ダイスにはロマンがあるよな

霧の街 第15話

 ランダムミッション「蛮族の偵察」 は潜伏と看破という二つの技能が大事になるが、アッシュは潜伏は得意なものの、看破はからっきし。なので結局時間をフルに使い果たしてしまい、任務達成はできたものの、夜間の移動を余儀なくされる。
 が、幸い夜間の遭遇はなし。
 無事に娼婦街へ帰還して経験点の清算を行った。

清算
経験点:1950点
戦利品:960G
成長:器用
スカウト 2 → 3
マギテック 0 → 2

 マギテックに目覚めたのは、ゲーム的には魔動機文明語の会話・読解と1レベルのターゲットサイトとフラッシュライト、2レベルのシャドウボディが有用そうだったためで、ガンナーに転向する意思はない。
 あとはMP稼ぎのために魔法使い系技能を伸ばす必要があるというのも理由の一つ。発動体であるマギスフィアを入手しており、装備制限が緩いというのも利点。
 アッシュのキャラロール的には、魔動機文明語の会話ができればキルヒア神殿跡のゴーストと意思疎通ができるんじゃないかな、という意識の表れということで。
SSっぽいモノローグ⇒
ゲーム記録⇒



 アリアドネに任務の報告した後、夜まで時間があったので、娼婦街から北へと歩いてきた。
 娼婦街は霧の街の中でもかなり北にあるから、この辺りはもう街の外壁に面してる。
 歩いていると、前方に人だかりが見えてきた。なにやら騒いでいる声も聞こえる。たくさんの人たち―― 蛮族も奴隷も浮民も―― が集まっていて、外壁の上の方を見上げていた。外壁は、その辺りだけ赤黒く汚れている。聞いたことはあったけど、ここが血染めの壁と呼ばれる場所みたい。罪人を吊るし、人々が石を投げつけて殺すという陰惨な所だ。
 そして今まさに、血染めの壁には新たな罪人が吊るされるところだった。
 何人もの人たちが外壁の上から吊るされ、処刑人がそれぞれの罪状を読み上げていく。

「罪人星の白金! 奴隷の身でありながら名誉蛮族のディーラーの指をへし折った!」

 指を切断しなかっただけ優しいと思う。

「罪人赤きサイクロン! 全てを巻き込み粉砕した!」

 やりすぎだ。

「罪人青タイツに黄色パンツ! 破壊光線をところ構わず垂れ流した!」

 もうさっさと処刑してほしい。

「罪人エドガー! 風の旅団の一員だ!」

 風の旅団…? エドガー?
 あたしの記憶にその名前が引っかかった。

「さぁ、お楽しみのはじまりだ! どいつもこいつも思う存分石を投げるがいい!」

 処刑人はそう宣言すると、さっさと下がってしまった。血染めの壁の前に集まった人たちが、口々に罵詈雑言を吐きながら石を手に取る。
 これは憂さ晴らしだ。普段虐げられてる浮民や奴隷が、鬱憤を晴らすかのように、罪人に一方的な暴力を加えるイベントだ。
 あたしはどうしていいか分からずに立ち尽くしていた。
 石を投げる気にはならない。でもこの人たちを止める気にもならない。
 ふと、吊られた罪人たちの方を見ると、一人の男と目があった。風の旅団のエドガーと読み上げられた男だ。
 その人は、優しい目をしてた。あたしと視線が合ったのは一瞬だけど、あたしが逡巡しているのは分かったみたいだった。

「いくらでも石を投げろ! ひとつくらいは蛮族どもにもな!」

 あたしの逡巡を断ち切るように、エドガーが叫ぶ。
 それが切っ掛けになったのか、一斉に投石が始まった。たちまち苦悶の声と悲鳴、鈍い音が血染めの壁に響き渡った。
 あたしは動けなかった。
 エドガーの声に、何か記憶が揺さぶられる。

『アッシュ、あたしは行くから』

 ふと、マリリン姉さんの言葉が耳に蘇る。

『5年前に出ていった兄さんよりも今のあたしのが年上だもん、大丈夫』

 マリリン姉さんは5年前、そう言って袋小路長屋を飛び出た。そのさらに5年前。あたしは5歳か6歳…?

『おにいちゃん!』

『はなせよ! ばんぞくどもをこの街から追い出すんだ!』

『これ、お待ち!』

 マリリン姉さんとミランダおばさんが誰かを引き止めているシーンがフラッシュバックする。

「ン~? 貴様投げとらんなァー」

 突然、周囲の騒ぎそっちのけで記憶を手繰っていたあたしに、蛮族がちょっかいをかけてきた。

「貴様、罪人を処刑するのはこの街の民の大事な仕事だろうがァ~? さっさと石を投げェい!」

 そういって、拳大の石をぐりぐりとあたしの胸に押し付けてくる。

「さぁ投げろ投げろ。さもないと貴様を連中と同罪とみなしてこの場でオレ様が処刑してやるぞォー?」

「… ばんぞくどもをこの街から…」

「あー?」

「ひとつくらいは、か…」

 あたしは石を構えた。

「よォーし、投げェい! あ、いや、あっち、あっち向いて投げわぼびゅ!」

 顔のド真ん中に石をめり込ませた蛮族を蹴り倒すと、あたしは血染めの壁に駆け寄った。

「エドガーおにいちゃん! 今助けるから!」

 あたしを阻止しようとわらわらと蛮族が駆け寄ってくるけど、どれも低級の蛮族だった。数が多いのがうざったい。なら、もっと多い数で対抗すればいい。

「ひとつくらいは蛮族どもにも!」

 あたしは周囲で事の成り行きを見守っていた人々に向かって声を張り上げた。
 顔を見合わせた人たちが迷っていたのは数瞬のことだった。



 血染めの壁からほとんど意識のないエドガーを背負って娼婦街まで帰りついたときには、とっぷりと日が暮れていた。

「あっきれた… 罪人を処刑場から強奪してくるなんて」

 アリアドネが声と表情と態度と仕草とで同時に呆れてみせる。心底呆れてるにしても器用な人だ。

「ごめん、ほんとに。でも、幼馴染なの。お願い、匿って」

「今さら返して来いなんて言わないわよ。それにしても意外と大胆なのね。まぁこの街を出たいなんて言うんだから、これくらいはあるかもって予想してなかったあたしの見込みが甘いだけかもしれないけど」

「ありがと。恩に着るわ」

「ほんとうに?」

 ふと、アリアドネの声の調子が変わったのが分かった。

「別に恩に着せようってわけでもないんだけどね、アッシュ。いちおう、あなたとあたしはギブアンドテイクの関係にあることは忘れないで。あなたはこの街を出たい。代わりに、あたしの仕事を手伝ってもらう。これはいいわね」

「うん…」

「で、今度はその幼馴染の彼を匿えばいいのね。代わりにあなたは何をしてくれるかしら?」

「うーん…」

 正直言って、あたしがアリアドネに協力できるとしたら、アリアドネの依頼をひたすら解決することしかできない。あたしがそう言うと、アリアドネは大きく頷いた。

「分かってるならいいわ。あなたの腕をオルゾゾへの紹介状よりも高く買いましょう」

 あたしがお礼を言おうとすると、アリアドネは首をゆっくりと振った。

「お礼の言葉じゃだめ。ちゃんと仕事を果たしてもらうわ。報酬の先渡しみたいなもんだもの」

「う… わかった。じゃあええと、何をすればいいかな。夢薬の販売委任状を手に入れろって話はもう請けてるけど」

「あたしたち月夜蜂のメインの仕事は暗殺よ」

 アリアドネはじっとあたしを見つめた。珍しく霧が薄まっているらしく、月の光が窓から射している。影になっているアリアドネの顔で、両眼だけが炯々と光っているようだった。

「”骨しゃぶり” ゾンネンフェレスっていうトロールを仕留めて。手段は問わないわ」



 ベッドに寝かせられたエドガーは、苦しげな寝息を立てていた。
 血染めの壁から助け出したときには、もう何発も石を浴びていて生きているのも不思議なほどの重傷だった。あたし自身、血染めの壁を脱出するのに力を使い果たしていて、エドガーはおろか自分の怪我の治療すら満足にできていない。考えてみれば偵察任務からずっと休みなしだった。

「エドガーおにいちゃん…」

 エドガーはあたしとは7つ違いで、マリリン姉さんも含めて、子供たちで遊ぶときは年長組としてみんなを引っ張っていた。10年前、詳しい経緯は知らないけれども、蛮族をこの街から追い出すと宣言して袋小路長屋を飛び出たっきり音沙汰がなかった。

「あたし、今じゃ暗殺者っぽいことやってるよ…」

 ベッドの傍らにあった丸椅子の上で、膝を抱えてため息をつく。
 エドガーは霧の街を蛮族から開放しようとして袋小路長屋を出た。そして今は蛮族たちに抵抗する組織、風の旅団の一員。
 マリリン姉さんは妹の仇をとるために、そして蛮族たちに復讐する為に袋小路長屋を出た。そして今は蛮族たちを暗殺する組織、月夜蜂の一員。
 あたしは霧の街から脱出するために袋小路長屋を出た。そして今は月夜蜂に身を寄せている。
 三人とも別々の理由で子供時代を終えたはずなのに、やってることはみんな同じだ。
 殺して殺されて。
 どこまでいっても血で血を洗うしかないんだろうか。

「う…」

 エドガーが苦しげな声をあげた。

「おにいちゃん?」

「追い剥ぎ小路… 旅団の仲間に… 俺が、無事だと…」

「追い剥ぎ小路? そこに風の旅団の仲間がいるのね? おにいちゃんが無事だって知らせればいいのね?」

「た、たのむ…」

「うん、わかった。知らせてくるから。だからがんばって」

 エドガーはまた意識を失っていた。
 翌朝、あたしは娼婦街を出た。



 蛮族の偵察任務を終えてアリアドネに報告した後、tbがまだ昼だったので、一箇所だけ空白パラグラフを開けようと目論む。
 拠点である娼婦街の周囲はまだ全然探索していないため、どんづまりである北のC-1をちらっと見ておこうと北上。オープンしてみると「血染めの壁」。
 ここから風の旅団に繋がる一連のミッションがスタートしてしまうという、厄介なトリガーパラグラフだ。

 とりあえず日のあるうちにここで戦うと蛮族の数が、数が。
 で、結局ゴブリン6匹と大乱戦。
 偵察任務の消耗がそのままだったので、かなりギリギリの戦闘になった。具体的には残HPが11で残MPが2。
 絞りカスのようなアッシュが絞りカスのようなエドガーを抱えて娼婦街に何とか戻り、アリアドネにエドガーを匿ってもらう。同時に固定ミッション「エドガーの無事を知らせる」 が発生。
 SS中ではこのときゾンネンフェレス討伐を依頼されていることになっているが、これは実際には4レベルになると自動的に発生するクエスト。で、アッシュは3レベルなのでこの時点ではまだ発生していない。まぁSSの演出ということで。


< 第15話 結果 >


・★★獲得
・クエスト「夢薬販売委任状の入手」 を実行中
・ランダムミッション「蛮族の偵察」 を完了
・固定ミッション「エドガーの無事を知らせる」 を受注
・戦利品:粗末な武器(10G)×2、武器(30G)×4
・E-3に「追い剥ぎ小路」 をプロット



(A-1) (B-1) (血染壁) (D-1) (E-1) (F-1)
(A-2) (B-2) (娼婦街) (D-2) (E-2) (F-2)
(A-3) (B-3) ( キルヒア ) (D-3) (追剥路) (F-3)
( 港 ) (B-4) (麻薬窟) (翡翠搭) (帰らず) (叫び門)
( シェス湖) (B-5) (ヤム酒場) (路地裏) (袋長屋) (F-5)
( シェス湖) (泉広場) (灼熱踊) (荒庭園) (黒の丘) (F-6)
( シェス湖) (B-7) (C-7) (明灯館) (E-7) (F-7)


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白銀

Author:白銀
TRPGと付き合ってはや十数年。
まさか結婚相手までTRPG者とは、TRPGで遊び始めた頃の白銀少年は知る由も無かった。

ルールブックの範疇で好き勝手に遊ぶので、ご一緒の際はよろしくどうぞ。

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