ダイスの言うとおり

ダイスにはロマンがあるよな

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

西の技術者 東の妖術師(非遊戯会ネタ)

 宇宙開発が飛躍的に進んだ時代があった。
 世界初の人工衛星。世界初の有人飛行。アポロによる月面着陸。

 いわゆる米ソの冷戦時代である。

 宇宙開発が爆発的に進展するとき、その中心には必ずロケット野郎がいる。  西陣営では、ドイツ出身でナチスでV-2ミサイルの開発を手がけ、後にアポロ計画を推し進めたヴェルナー・フォン=ブラウン。
 そして東陣営では、存命中は西側による暗殺を恐れた当局によって徹底的に秘匿され、その名前がまったく知られることはなかったセルゲイ・パブロビッチ・コロリョフ。

 フォン=ブラウンの方はV-2の戦果から東西に名が知られており、当時から当代一のロケット野郎として名が売れていた。
 ナチス崩壊後は逮捕されるのを恐れるというよりも研究ができなくなるのを恐れ、自ら進んで連合軍にその身を委ね、後のNASAで強力に宇宙開発を推し進めた。
 彼の使っていたドイツ製の計算尺は「技術者のツール」 と称され、今もスミソニアンに展示されている。

 そのフォン=ブラウン擁する西側をして、「東には妖術師がいる」 と言わしめたのがセルゲイ・コロリョフ。第二次大戦後にソ連が確保したドイツ人科学者(ナチスの科学力は文字通り世界一だったため、連合軍は占領した地域のドイツ人科学者をすごい勢いで確保し、連れ帰った) は5000人に登るが、彼らから技術と知識を吸収したコロリョフは、まさに魔術的な手腕で東西の宇宙開発をリードしていった。
 NASAを出し抜いてスプートニクを打ち上げ、続いて犬のライカを宇宙に送り、そしてガガーリンを地球に生還させた男。ソ連は西側に暗殺されるのを恐れ、宇宙開発に携わるスタッフの名前を一切公表しなかった。だからコロリョフの名も冷戦が終わるまでは西側は誰も知らず(どうもスゴイというか、とんでもない奴がいるらしいが、それが誰か分からないなぁ、という認識だった)、ノーベル賞査定委員会からの打診に「スプートニクは人民の力で打ちあがったのだ」 とソ連の官僚が応えなければ、間違いなくノーベル賞を受賞していた男。
 彼の使っていた計算尺はフォン=ブラウンと同型のもので、「妖術師の杖」 と称され、フォン=ブラウンの「技術者のツール」 に並んで展示されている。

 二人の足跡はそれなりに対照的なものだった。

 フォン=ブラウンはヒトラーに気に入られ、V-2ミサイルの開発に従事し(1944年最初のV-2がロンドンに着弾した日にフォン・ブラウンは同僚に「ロケットは完璧に動作したが、間違った惑星に着地した」と述べた)、その功績を引っさげて連合軍に渡り、そしてあのアポロ計画を成功させた。しかしその後アポロ計画の予想外に早い打ち切りを以ってNASAを追われ、不遇の晩年を迎える。

 コロリョフは研究者仲間の虚偽の告発で強制収容所に送られ、そこで全ての歯を失い、心臓を患った。だが減刑(10年 → 8年) されて復帰するとその手腕を振るい、世界で初の有人宇宙飛行を達成し、告発の虚偽を晴らして名誉をも回復。そして最期は月有人宇宙旅行を目指しつつ、医療事故(ガンの手術中に心停止) により亡くなった。

 二人に共通していたのは、まず手段を問わない積極性だった。
 何が何でもロケットを打ち上げる。その為には金が要る。だから二人はミサイル開発という形で国から予算を取った。
 フォン=ブラウンは「月まで飛ぶロケットがあれば隣の大陸を狙うことなど造作もない」 と言い放ち、コロリョフは実際に世界初の大陸間弾道ミサイルを完成させている。
 そんなことは二人にとって余技だった。何よりも二人に共通していたのは「宇宙へ行きたい」 という熱望、ただその一点だった(フォン=ブラウンなど「宇宙にいく為なら悪魔に魂を売り渡してもよいと思った」 とまで言い切っている)

 スペースシャトルの不出来はフォン=ブラウンの怨念とまで言われているNASA。
 国から裏切られながらも宇宙開発に尽力し続けたコロリョフ。

 宇宙開発が爆発的に進展するとき、その中心には必ずロケット野郎がいる。

 今、世界の目が中国の宇宙開発に注がれている。
 打ち上げ失敗して村を丸ごとひとつ吹き飛ばしてから中国の宇宙開発は変わった。
 長征ロケットの連続打ち上げ成功(まだ連続成功中)、初の有人飛行など。どうも中国の宇宙開発の中心には、コロリョフ級の人間がいるのではないかと目されている。

 日本の宇宙開発はそれらに比較すると決して劣っているわけではないのだが、「人材を育てても送り込む場所がない」 と宇宙教育の現場で嘆かれる閉塞状況に陥っている。
 政治力となりふり構わなさを兼ね備えたロケット野郎の登場が待たれている。


 今年はフォン=ブラウン死後30周年、コロリョフ死後40周年なので、ちょっとした二人への追悼を込めて。
 コロリョフの再婚相手のニーナ婦人はまだご存命で、モスクワの街で観光スポットになっているコロリョフ邸にまだお住まいしているそうです。いつか行ってみたいけど、英語全然通じないらしいので、まずロシア語の勉強だな……

« なんだか|Top|恐怖の黒いやつ »

コメント


相変わらず読んじゃいますね!

名前は知らなかったが…

> ヴェルナー・フォン=ブラウン
逸話を読めば誰だかわかるくらいの有名人ですね、この方。
それまで打ち上げ以前の段階にあったNASAのロケットをあれよあれよという間に宇宙まで飛ばしちゃった方(おおげさ?)
旧ソ連の方は存じ上げませんが…。

こういう話題に触れるたび、我が家の本棚が危険領域に突入しそうなんですけどどうしたもんか。

れっすます

> ユメ

あんまり鵜呑みにしないでね!w


> 雪だるまさん

フォン=ブラウンはプラネテスという作品でもオマージュキャラが登場していますし、名を冠した宇宙船も登場してましたね。
ガンダムにも月面都市フォン=ブラウン市が出てきたりと、宇宙関係の作品には良く名前が登場します。

一方のコロリョフは、存在が明らかになったのは戦後のことですし、業績が明らかになったのはずっと後だからネームバリューは低いですね。

この二人の伝記を読むともう、この二人関係の本を求める手が止まらないという恐るべき二人です。
気をつけるんだ!(本に埋もれつつ)

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

http://silverwolf5218.blog55.fc2.com/tb.php/122-cf6c4568

Top

HOME

白銀

Author:白銀
TRPGと付き合ってはや十数年。
まさか結婚相手までTRPG者とは、TRPGで遊び始めた頃の白銀少年は知る由も無かった。

ルールブックの範疇で好き勝手に遊ぶので、ご一緒の際はよろしくどうぞ。

名前:


本文:

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。